ワン・ホール

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   みんなから。  誰か一人に依存するんじゃなくて、みんなに少しずつ甘える。みんなから少しずつ、元気をもらう。  ……そうか。  私はずっと寂しくて、彼氏でも、友達でも、誰か一人にいつも重荷を負わせていた……。 「ちょっと、ケーキまだ?」 「別腹足りない! とっとと持ってきて!」  リビングから酔いの回った三人の声がする。私は皿に盛ったケーキを見つめた。  彼氏一人が用意したんじゃない。みんなが持ち寄ってくれた、まとまりの無いケーキたち。タルト、ミルクレープ、ショートケーキ。だけれどそれはちゃんと私の願いを叶えていて、ワンホールケーキになっている。  私はなんだか、満たされた気持ちになっていた。 「カラオケ、今度から私も付き合うから。程々にね」  あずちゃんはそう言って、リビングにケーキを運んでいった。  あずちゃんの後ろ姿を見て、なんとなく思った。  ……そうか。最初から今日は、私の失恋慰めパーティーだったのか。だから私だけ、お金もケーキも持ってこないでと言われた。全部、あずちゃんと三人の計画だった。三人が私をこき下ろしたのは、全部演技。私が欲しかったプレゼントを、彼一人からもらおうと思っていたものを、みんなが手分けして用意してくれた。  私は少しだけ、一人になった台所で泣いた。  
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