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〝お前、重い。別れよう〟
あの言葉を思い出す。
また一年も持たなかった。
いや、一年どころじゃない。付き合い始めたのは私の誕生日の少し前くらいからだから、せいぜい五ヶ月強だ。半年も持たなかった。あずちゃんたちは四年もの間喧嘩も無く付き合って無事ゴールインしたというのに、私はなんという体たらくであろうか。フラフラしているうちに、年齢は二十代半ばに差しかかってしまった。
「……先月、二人でここに遊びに来たときはいい雰囲気だったじゃない。なんで別れちゃったの」
あずちゃんが困った顔をして、ころんとソファーに寝っ転がる。私は思わず、彼女の華奢で白くて、今にも折れそうな手足を見つめる。彼が言ったあの言葉は本当に体重の話かもしれない。
「……私、重いんだってさ。クリスマスプレゼント、要求し過ぎたかも。東京湾クルージング、夜景の見えるレストランでディナー、ホテルでサプライズのワンホールケーキ……」
「サプライズで、ワンホール」
あずちゃんが顔を背けてくつくつと笑う。自分から依頼したらサプライズじゃないことも、二人でワンホールケーキは大きいことも分かっている。それでも、私は思わず冷蔵庫に入れようとしていた椎茸を投げつけそうになった。
「もう! 私、ケーキはワンカットじゃ全然足りないの! ……いいよね、あずちゃんは。この先ずっと兄貴と一緒でさ、絶対寂しくないもん」
そう言うと、あずちゃんは笑いすぎて涙目の顔でこちらを向いた。
「そんなことないよ、今夜だってもうこんな時間なのに……」
あずちゃんがそこまで言いかけた瞬間、玄関のドアがガチャリと鳴った。
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