ワン・ホール

8/12
前へ
/12ページ
次へ
   クリスマスは兼同窓会となり、大いに盛り上がった。  あずちゃんが大量に用意した料理はどんどん減っていったが、追加で持ってきていた三人の料理がそれを補った。私が一番よく食べるくせに、手ぶらで来たのは私だけで、日頃無遠慮の私も流石に申し訳ない気持ちになった。  同級生三人は三人とも、何故かケーキを持ってきていた。  あずちゃんから、それぞれがケーキ調達担当だと言われていたらしい。一人三個のケーキを持ち寄り、計九カットものケーキが集まった。三人がリビングで盛り上がっている中、私とあずちゃんは台所でそのケーキを皿に盛った。 「ほら! これでだいたいワンホールケーキじゃない?」  確かに。無理やり丸く整列させると、歪なワンホールケーキになった。私の望み通りだ。もし兄貴がいたら、大食らいの兄妹二人でペロリといってしまったかもしれない。  そう思って、ふと考える。  それぞれが持ち寄った三つのケーキ。  それは、同級生三人の分。あずちゃんは妊娠中なのでケーキは避けている。そして私の存在は内緒にしていたとしても、兄貴の分が含まれていない。  あずちゃんは、最初から兄貴がどうせ今夜残業になることを予感して、ケーキを三つ、みんなにお願いしたのではないか。 「……やっぱり、新婚の初めてのクリスマスなのに、兄貴がいないと寂しいよね」  つい、そう言ってしまった。  私が逆の立場だったら。東京湾クルージングも無く、夜景の見えるディナーも無く。サプライズのホールケーキも無く、彼氏が仕事に行ってしまったとしたら。  私なら喚くだろう。電話をして、早く帰ってきてとせがんでしまうだろう。寂しくて、どうしようもなくなってしまうだろう……。  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加