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すると、あずちゃんは小さく首を振る。私は彼女の横顔を見つめた。
「……舞ちゃん。失恋のストレス、全部カラオケにぶつけたら喉が潰れたでしょ」
急に、話が飛んだ。
私は頷く。あの日は振られた夜で、いてもたってもいられず、夜のカラオケ店で朝まで歌い倒していたのだ。喉の痛みは今は完治したものの、下手したら咳喘息に悪化しているところだった。
「うん」
「彼氏にたくさんのものをねだったら、離れていったでしょ。友達にたくさんのものをねだったら、離れていったでしょ」
「……うん」
その言葉に、様々なことを思い返す。
何度も連絡する度に、素っ気なくなっていった彼のチャット。彼に夢中のときは寄り付かないのに、別れた途端に寂しくて付きまとってしまった友達たち。
みんな疎遠になっていく。でも寂しくて、どうしても求めてしまう。
あずちゃんは、私の正直な反応にふふ、と笑うと、言葉を続けた。
「……私も寂しくてさ、本当は恭介に甘えたかったんだ。私は舞ちゃんと違って友達も少ないし、恭介くらいしか甘えられる人がいないし。たぶん、みんな寂しいときってあると思う。……でもね、私、恭介だけに甘えるのはやめた。みんなに甘えることにしたの。本当は恭介に『もっと早く帰ってきてよ』って言えない訳じゃないけど……そうすると、仕事と家庭でいっぱいいっぱいになって、恭介が壊れてしまうから。恭介一人からもらうんじゃなくて、みんなから少しずつ甘えるの。そしたら何も壊れない。喉も。友達も。恋人も。寂しいときもあるけれど、誰か一人に依存するんじゃなくて、みんなから少しずつ元気をもらうの。そうしたら、うまくやれる。……私、そう思ったんだ」
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