ワン・ホール

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   重い、と言われたので体重計に乗った。  そしたら本当に体重が増えていた。先月と比べて三キロも増だ。両親も兄貴も大食らいで太りにくいタイプだというのに、二十代の女子の体は本当に侮れない。完全に規定オーバーだ。  ……もちろん、そういう意味で言われたわけじゃないというのは分かってるけど。 「舞ちゃん、また勝手にうちに入って」  あずちゃんがスーパーの袋を両手に抱えながら、ふらふらとリビングに入ってきた。  あずちゃんの家の予備の鍵は、今日は庭のパンジーの鉢植えの下に隠してあった。あずちゃんの行動などすべてお見通しだ。だって私は、あずちゃんと兄貴が付き合うずっと前から仲良しの、幼馴染なのだから。  妹の友達に手を出すなんて、本当にけしからん兄貴。  ……とは思わなかった。二人が結婚して、これで晴れて私たちは親戚同士。べったりな関係、続行なのだ。    私はあずちゃんに満面の笑みを向けると、疲れているらしい彼女の代わりにスーパーの食材を冷蔵庫に入れた。あずちゃんはありがとう、と一言言うとソファーにぐったりと倒れる。……よし、交渉開始だ。 「ねえあずちゃん、一生のお願いがあるの。聞いてくれる?」 「……ん? あれ、舞ちゃん風邪引いた? 声枯れてるよ」 「ああ、これ、昨日一人カラオケで五時間……」  そこまで言って豪快に咳が出た。そっとあずちゃんを見ると、あからさまに嫌そうな顔をしている。 「……ね、昨日彼氏に振られたの。来週のクリスマス、ここで過ごさせて」  
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