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「どうしてみんなわらうの?」 「楽しいからよ」 「たのしい」 「貴女も楽しいと笑うでしょう?」 「わらうのかしら」 「ええ。笑ってごらんなさい?」 「チチ、チチチ」 「ふふ、上手ね」 「ほんとう?」 「本当よ。貴女は歌も上手いのね」 「そんなことないわ」 「あらどうして?」 「だってかあさまはわたしをおいてどこかにいってしまったんだもの」 「あらひどい」 「わたしだけちいさいからおいていかれちゃった」 「それは寂しいわね」 「さみしい」 「そう、寂しい」 「わたし、さみしいのね」 「そうよ。だってほら、泣いているじゃあないの」 「ないてるの?」 「だってさっきからずっと私の腕が濡れているわ。これは貴女の涙でしょう?」 「それはあめよ」 「雨だとしたら、なんてしょっぱい雨なのかしら」 「なみだはしょっぱいのね」 「胸がシクシク痛んで、そうして心臓が破れちゃうの。だから涙はしょっぱいのよ」 「かあさまは」 「うん?」 「かあさまはどうしてわたしだけおいていったのかしら」 「どうしてでしょうね」 「かなしいわ」 「悲しいわね」 「さみしい」 「寂しいのね」 「ねえ、もっとそばにいってもいい?」 「いいわよ。おいで」 「あなたのうではあたたかいのね」 「今はたくさん着込んでいるからかしら」     
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