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「せっかくきれいなのによごしてしまうわ」
「いいのよ。どうせ後数日で全部無くなってしまうんだから」
「どうして? せっかくきれいなのに」
「風が吹いたら無くなるのよ。もうおしまい、って」
「おしまいになったらどうなるの?」
「そうしたら、次は新しい色になるわ。今はほら、薄い桃色でしょう?」
「ええ。ひかりがあたってむこうがすけてみえる」
「みんなこの色を見たくて、ここに来ているのよ」
「かなしくないの?」
「どうして?」
「だって、そのいろじゃなくなったらみんなあなたをみにこなくなるのでしょう?」
「こうやって集まってくることはないでしょうね」
「それは、さみしいとはいわないの?」
「寂しくないわ」
「むずかしいのね」
「私も最初は寂しかったわ。どうして私を見に来てくれないの? って」
「うん」
「でも気がついたの。いつも同じだったら飽きちゃうでしょう? 一年に一度だから、みんな有難がって見に来てくれる。それならそれで、精一杯着飾ろうと思ったの」
「あなたはつよいのね」
「そうでもないわよ」
「だってひとりぼっちでもなかないじゃない」
「昔たくさん泣いたから、涙が枯れてしまったのよ」
「わたしもいつかなかなくなる?」
「貴女は泣いていいのよ」
「わたしはいいの?」
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