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「そうよ。だって貴女が泣くと歌になるから」
「わらってもうたになったわ」
「笑っても泣いても歌になるの。それって素敵だわ」
「わたしはここにいてもいいの?」
「お好きになさい。私はいつもここにいるから」
「そうね。あなたはいつもここにいるわ」
「ここにしかいられないの。だから貴女が羨ましい」
「どうして?」
「だってどこにでも行けるでしょう?」
「とおくへはいけないわ。かあさまをおいかけることができなかったもの」
「きっとこれから行けるはずよ」
「どこにいるかわからないのに」
「いつか分かるわ」
「でも、そうしたらあなたはまたひとりぼっちになってしまう」
「優しいのね」
「だってひとりはさみしいでしょう?」
「寂しいわね」
「だから」
「優しいのね、貴女」
「ねえ、ないてるの?」
「泣いてないわ」
「だっていま、あたまのうえにいずくがおちてきたわ」
「それは雨よ」
「でもそらはまっさおよ?」
「空が青くても雨が降ることはあるのよ」
「ふしぎね」
「そうね」
「どうやったらあめはやむのかしら」
「……こちらにおいで」
「こっち?」
「そうよ。お口を開けてごらんなさい」
「はい」
「いい子ね」
「ん。……なあに? いまの」
「雨が止むおまじないよ」
「くちばしをついばむことが、おまじない?」
「そう」
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