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愚者の贈り物
ごめんね、待たせたね、と君が言う。
最近会えなかったね、寂しくは無かったかな、なんて、いつもの微笑みを崩さずに言うけれど、いつもと違う呼吸パターンと心拍数。少し赤らんだ頬は、外が雪が降るほど寒いから、だけではないでしょう?
君にはなんでもお見通しか、弱ったな。そんな言葉もいつも通り。あなたが私にくれたこの体が、あなたの全てを教えてくれるのだから、馬鹿なこと、なんて返さなくて分かっているでしょう?
観念したように奥から取り出してきたのは、少女の体。真新しい貼りたての、綺麗な生体皮膚。これ、給料三ヶ月分、なんておどけて見せてるけど、私はあなたにちゃんと食事をとってもらいたかった。いつまでも、あなたが死んでも待っていられるのだから、あなたが私のために命を削ることはないのよと、ディスプレイが表示する文字は、君に届いただろうか。
培養液の中の脳みそで、涙の出ない人口眼球の映す、私の新しい体を受け取った。
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