亜以子vs煌太

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「もういい」と煌太に告げた俺は、一つ決意を固めていた。 煌太の鼻水を取りながら、チラリと横に目を流す。 …ボロボロ泣きすぎだ。親父。 …頼むからどこか行ってくれ。 そう願うものの動きそうにないので、やはり放っておき。 「…こ……煌太ぁぁぁぁ!」 「…あ…亜以ぢゃぁぁぁ!」 そうしている間に、階段を使ってダッシュしてきたであろう亜以子が、息を弾ませながら叫び声を上げた。 煌太も吊られるように叫び、お互い同時に走り出す。 せっかく拭いた鼻水と涙も垂れ流し状態になった煌太を見て、亜以子も吊られるように泣き出した。 「…亜以ぢゃ…うわぁぁああん!!」 「煌太…煌太ぁ…」 「「…会いたかったよぉ…」」 二人同時の呟き。 それは胸にしまった本音。 俺は二人に近づき、纏めて抱き締めた。 「…うえぇぇええ…ママ…ママぁ……」 「…なぁに?」 「…僕…ふぇぇええええ…」 「どったの?」 「…おうぢにっ……がえりたいよぉ! うわぁぁああん!うわぁぁああん!」 亜以子を見た途端、これだ。 鼻水と涙同様、垂れ流しの本音。 「…まーぐぅん…亜以ぢゃ……」 今度は煌太も亜以子も俺に抱き付いて。 固く結ばれた何かが、ここにあるのは確かで。 俺は二人の背中をポンポンと叩いた。 「…もういい。…二人とも。」 「「…ふぇぇえええ…」」 「泣き方一緒だな。ったく。 もういいんだ。分かったよ。」 俺は立ち上がって副社長室へ歩を進めた。 途中、泣きまくってる親父に呟く。 「頼むからどっか行ってくれ。 俺、これから過去最高にダサいことするから。」
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