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そんな折、掲示板に社内コンペ開催が発表された。
うちの会社では、一般社員とバイト、パートがエントリーし、その審査を役職が担当する。
審査員の助言、アドバイスは無制限。
ただし、コンペ発表からプレゼンまで、僅か一週間という短期間だ。
良くできた企画は社を代表する企画として、実際に売り込んでいく。
金一封に加え、企画担当者としてのポジション、そうなれば昇給昇格も目の前だ。
そのため、社内コンペは我が社の一大イベントになっていて、このときばかりはみんなの目の色も変わる。
そして、俺のところに社員が殺到する鬱陶しい期間でもある。
「課長!これ、どうですか?」
「課長!俺のも見てください!」
隣にいるオヤジにも、誰か聞いてやれよ。暇そうにしてるじゃないか。
心で毒舌を吐きながらも
「もっと練り直せ」
「ここ、具体的に表を作ってみろ」など
瞬時に判断してアドバイスを送る。
そういうときでも普通に仕事はあるもので、自分の割り当てられた企画書を作っていく。
…全く捗らないが。
と、ふと堂本亜以子に目を向けた。
彼女は淡々とPCで仕事をしていた。
そんな彼女に近づいてみる。
「堂本。お前はコンペ参加しないのか?」
「え?はい。」
「なぜ?お前ならいいものが出来そうだけど。きっと社で企画されるぞ。」
「ありがとうございます!」
「……いや、ありがとうじゃなくて。」
「正直、金一封は欲しいです!」
「……そうか。」
「でも、企画担当者は死んでも要りません!」
「……………」
「17時に上がれなくなりますから!」
…なるほど。
タイムマシーン、発動。ってわけか。
17時上がりを拘る。
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