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突然、親父から電話があり、近畿支社の視察を兼ねた調査をしてほしいと言う。
聞けば、備品在庫の数と上に上がってくる明細の数字が合わないらしい。
横領、着服等の疑いも視野にいれたもので、俺が行くことになった。
「すまないな。」
「いえ。帰りの予定は?」
「分からない。調査が済むまでだろう。それまではすべてのアポは断ってくれ。煌太、おいで。」
「はい?」
「俺、しばらく家に帰ってこないから。」
「え、家出ですか?」
「ブハッ!……ま、ある意味家出か。
出張といって、遠くの場所にある会社に仕事しに行くんだ。だからママと二人きりになる。
お前がママを守るんだぞ?ここにはもう健三郎たちはいないんだから。いいな?」
「自宅警備員ですねっ!分かりました!」
「…うーん。ちょっと違うけど、まぁいい。頼んだぞ。」
「はいっ!」
「亜以子、スーツ三着くらい入れといて。」
「はーい。適当でいいですか?」
「ああ。」
クローゼットには20着以上のスーツがある。
その中から亜以子にチョイスしてもらい、自分は髪を整えて身支度。
煌太も煌太で「歯磨き入れた!」とお手伝いだ。
今までは全部一人でやってたのに。
こんなことでも幸せになる俺ってどうかしてる。
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