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ゴスッ!
「!」
ゴスッ!ゴスッ!
…ずーーっと昔、聞いた記憶のある音だ。
ゴスッ!ゴスッ!
その音源を辿っていく。
やっぱりデスクの下。
自分のデスクではなく俺のデスクだが。
足音を立てないように静かに近づき、中を覗いてみる。
…いつかは、文句と一緒にストレス発散だった。
…今はどうだ。口を一文字に閉じ、何かをグッと堪えている感じで。
ポロポロと流れ出す涙は止まることを知らない。
「……亜以子?」
「!」
「ただいま。」
声をかける。
亜以子はビクッと反応し、ゆっくり俺へ目を向ける。
敢えて笑いながら声をかけた俺。
笑顔を見たからか、俺自身が帰ったからか。
亜以子は一瞬ホッと息を吐くと、再度顔を歪ませてポロポロ泣き出して。
「…分かんない…どうすればいいんですか…
やだ…やだよ…助けて雅継さん…」
かなりパニックになっている。
理由を聞くより先にやるべきことは、落ち着かせることだ。
デスクの下から亜以子を引きずり出すと、
「よく一人で頑張ったな。」
何を頑張ったのかは不明だが、俺が出張に行っている間、何かが起きて必死で戦っていたことは分かった。
…すぐに言えばいいのに。
…出張の邪魔になりたくないとでも思い、俺に何も言わずに今日まで我慢して。
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