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社会人として、仕事中に私事を持ち込むことは許されない行為。
…俺が言えることじゃないけど。
でも、今日だけは甘やかせてやりたいと思った。
ほんの一週間。
短いようで長かった。
数日前の亜以子とは違っていたのだ。
頬はこけ、目の下にクマを作り、食事も睡眠も十分ではないらしいことが伺える。
目蓋は腫れ、唇は切れ、泣きながら我慢をしていたことも分かる。
「堂本。今日はもう上がれ。」
「…いえ、仕事します。」
「上司命令だ。家に帰って休むんだ。
君の仕事は冴島に頼むから。」
「副社長、私は大丈夫です。」
「大丈夫じゃないだろ。…亜以子、頼むから。こんな状態でまともに仕事なんてできないだろ。ミスしたら自分を責めるくせに。
君の仕事の代わりはいくらでもいるが、俺の彼女の代わりはいないんだから。…煌太のママの代わりだって存在しない。」
「…っ」
「今日は俺も早く帰るから。な?」
素直にコクンと頷くと、深く頭を下げて「すみません」と言った。
送ると言ったものの、亜以子はそれを拒否。
タクシーで帰るから心配ないと言って空笑いをした。
冴島に事情を説明して帰り支度を済ませた彼女を見送る。
「……………」
俺の言葉に、一瞬顔を歪めたのが分かった。
なにに反応した?
恐らく、煌太の行。
いったい何があったんだ。
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