2044人が本棚に入れています
本棚に追加
ギュッと胸の服に皺を寄せた。
どうしようもなく罪悪感に襲われたから。
別に悪いことをしたわけじゃないのに、胸が痛かった。
ネクタイを緩め、第二ボタンまで外した。
ゆっくり窓を開けると、ピクッと亜以子が反応した。
バルコニーに出て、窓をしっかり閉める。
そして亜以子に近づき、自分も床に腰を落とし、震える身体を包む。
「…遅くなって悪かった。ただいま。」
「…お帰りなさい。」
「…ほら、こっち向いて。」
「……………」
「…どうした。思いっきり泣け。泣き止むまでこうしててやるから。」
ふふ…といつものように笑った後、堰を切ったように泣き出した。
頼っていたものにすがるように
泣ける場所を見つけた子供のように
俺のシャツを思いっきり握り締めながら。
「…江川さんが…来たんです…」
泣き終わり、落ち着きを取り戻した亜以子は、開口一番にそう告げた。
ドクン!と自分の心臓が跳ねたのが分かった。
「…何を言ってきた。」
「…あ、いえ、雅継さんが思っている人たちじゃないんです。」
「…どういうことだ。」
「…お兄さん、といえばいいんでしょうか。私も全然知らなかったんですけど、私が親しくしていた江川さん…煌太パパにはまだ兄弟がいたんです。
あの日会っていなかった兄弟がもう一人。
頭を鈍器で殴られたくらいの衝撃でした。
…私の知っている江川さんがいたから。」
「…瓜二つ?…双子の兄?」
「…はい。」
最初のコメントを投稿しよう!