君が頑張りやさんのそのワケは。

亜以子vs煌太

「でも彼にとっては大事な家族。しかも一番仲がよかった兄弟ということを知っている家族が、自分に嘘をつくことは出来ないはずだ。

そう思い込んでいたらしく、疑うことなどなかった。

そうして月日だけが過ぎていき、先月の月命日に重大なことにやっと気がついた。」

「…煌太か。」

「はい。江川さんは葉月ちゃんと結婚してからご家族とは疎遠になっていましたが、唯一彼とは連絡を取っていたそうです。

月に一度は必ず電話かメールを。
そのときに家族のことや葉月ちゃんのこと、結婚のことも子供が生まれたことも知ったって。」

「…ああ。」

「その煌太の名前は、弟が眠る墓にも葉月ちゃんが眠る墓にもなかった。

彼はもう一度家族を問い質した。
そして、ようやく口を開いて事実を知った。

引き取りをみんなが嫌がったこと、葬式で言い合いになったこと、そこで私が出てきて引き取ったこと。…その場にいた友人知人に状況を教えてらい、それが事実か問い質したら諦めたように肯定したんだと言っていました。」

「……………」

「…はじめは信じられなかったんです。どうせまた嫌味を言われるんだろうと心の準備だけはしていましたが…

彼は土下座して謝ったんです。私に。」

動揺、というには物足りない。

まさに衝撃だっただろう。

あんなに辛い思いをしてまでも煌太の幸せを願って、そして、葉月ちゃんの大事な形見を恩返しと思って大事に育ててきた亜以子には…重く、天地がひっくり返るほどの衝撃。