亜以子vs煌太

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翌日の亜以子は昨日とはまるで違う人物のように元気だった。 秘書課の人間は全員が俺と亜以子の関係を知っている。 俺が帰ってきたから元気になったとみんなからからかわれ、亜以子は笑って”そうかも”と言っていたが。 「副社長。明日のご予定に八丸産業さんを入れてもよろしいですか。」 「ああ。空いている時間があれば、君が適当にいれて構わない。」 「分かりました。では14時から当社でのアポを承ります。」 「ああ。」 「…あと、少しだけお時間いいですか。」 「どうした。」 「今、昼休みの時間なので。…お邪魔じゃなければここにいてもいいですか。」 「ああ、もうこんな時間か。俺も休憩にしよう。」 「…っ!あの、コーヒーいれてきます。」 「ん。」 不安で仕方がない。 みんなに隠して、一生懸命ニコニコして。 いつだって周りを盛り上げる役に徹する。 息抜きは俺の役目だ。 とことん甘やかせて、少しでも不安が少なくなるようにして。 「雅継さん…ちょっとだけ抱っこ。」 「……………」 なにこれ。 ちょーかわいー。 「絶対、一緒にいてくださいね。約束ですよ。」 「分かってる。」 「…甘えてしまってごめんなさい。…ちょっと甘えたい気分なの。」 「そういうことはいつでも。てか、俺的には今くらい甘えてくれたほうがいい。」 「…ふふ。私、結構甘えてると思いますけど。…もっと?」 「…もっと。」 可愛く微笑む心の内側は、きっと泣き崩れそうなほどなんだろう。 でも、自分のことでもあるし煌太のことでもあるから、気丈に振舞う頑張り屋さん。 そんな君が誰より愛しい。
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