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その日、俺は亜以子と共に定時で上がって煌太を迎えに行った。
俺の車に乗るのも何度目だろうか。
借りっぱなしのチャイルドシートにちょこんと座った煌太に話しかける亜以子。
「煌太。」
「はい!何ですか?」
「ちょっとお話があるんです。」
「はい。」
「…今から、私とまーくんと三人で、ある人に会って欲しいんです。」
「誰ですか?」
「……………」
「…亜以子。」
「大丈夫です!…私が言います。
…煌太。会って欲しい人のお名前は、江川輝弥さんといいます。」
「…え、……江川?」
「はい。煌太とおんなじ名前です。」
「……………」
「煌太の知っている人たちとは違います。とっても優しくて、笑った顔が煌太のパパにそっくりな人です。」
「…ほんと?…亜以ちゃ、会ったの?」
「はい。煌太が幼稚園に行っているときに会いました。まだ会っていないのは煌太とまーくんだけなんです。」
「…まーくんも会いに行くの?」
「ああ。」
”江川”と聞いて、瞬時に顔を強張らせたのをバックミラーで見ていた。
亜以子もすぐに気づきフォローする。
そして俺も行くことを言えば、少し落ち着いたように肩の力が抜けたのが分かった。
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