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久々に抱き締めた小さな身体。
その小さな手が、全力で俺を求めている。
離れないように、離さないように
服に皺が寄るほど、強く強く求めている。
「……エヘヘ……ばーぐんど…でぃおいだぁー…」
俺の胸に顔を埋めながらの鼻声は、なんとも聞き取りづらいが。
"まーくんの匂いだ"なんて変態じみたことを無自覚で言っているのは分かった。
涙が落ち着いたのを待ち、煌太を少し離す。
「……わぁー。ずごい。」
「ったく。ほら、チーンしろ。」
俺の服と自分の鼻を繋ぐ高架橋を見て、間抜けな感想が飛び出した。
笑いそうになるのを堪え、廊下まで持ってきたティッシュで煌太の顔を綺麗にする。
江川輝弥の姿は副社長室の中。
煌太からは見れない位置だ。
…なぜ出てこない?なんて愚問だ。
ここに煌太がいること、それだけで分かっているんだろう。
まだグズグズの煌太に話しかける。
「どうしたんだ?煌太。」
「……ひとさらいにあいました。あの人。」
「違う!エントランスでまーくんまーくん叫びながら泣いてたんだろう!
私の知る限り、まーくんはお前だけだし!亜以子ちゃんの子かなって思ったから!」
「おばけ!あっち行け!」
「煌太。やめなさい。」
「…はぁい。」
「親父も。…ガキか。あっち行け。」
「ひどーい。」
親父は放っておき、今は煌太に集中。
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