亜以子vs煌太

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泣き叫ぶ声が響く廊下で、俺は感動の涙を浮かべた。 …俺はしっかりお前のパパだったんだな。 亜以子には胸を張れと言ったが、俺も胸を張れると思った。 「…うぇぇ…ヒック…… まーくん……僕、…もっと…ね?」 「ん。」 「おじさ……お話っ…したいの… でもね?…怖いの……怖いよぉぉ…」 「…おじさんが怖いのか?」 「…ちがうの…っ… おじさん……聞いてくれるっ…って…思う けどっ……ヒック……うぅーー… 僕が…怖いの…っ……パパじゃないけどっ…パパだから…」 …なるほど。 煌太にとって、亜以子はすべてだ。 亜以子の言葉もすべてなんだ。 亜以子は約束した。 煌太の傍にずっといる、と。 今回は亜以子から離れた訳じゃないから仕方ないが、煌太の記憶の中じゃ、その言葉は大事だ。 自分の父と同じ顔の江川輝弥が、父のように突然消えてしまいそうで。 だから父と同じように接すると、父のように突然自分の傍からいなくなるんだと恐怖していた。 …恐らく、江川輝弥とは"約束"してなかったんだ。 たったそれだけのこと。 でもこいつにとってはそれだけで済まされないこと。 小さな胸に抱えたもの 発見 理解 拒絶  願望 落胆 恐怖 …限界を越え、切羽詰まって、助けを求めに来た。 言葉足らずの煌太。 それでもすべて理解できる俺は、胸を張ってパパだ。
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