亜以子vs煌太

106/109
2046人が本棚に入れています
本棚に追加
/312ページ
暫くの沈黙。 息苦しい空間。 数時間と思えるような時間を経て、江川輝弥が口を開いた。 「…頭を上げてください。…4人とも。」 「………え?」 一番に驚いたのは俺だ。 パッと体勢を戻すと、俺の両脇に亜以子と煌太が、そして煌太の向こうに親父が、俺と同じように土下座していたのだ。 見回して、江川輝弥に目を合わせた。 彼は泣きながら微笑みを浮かべた。 そして煌太へ視線を落とす。 「…煌太。ごめんな。」 「……………」 「おじさん、煌太に悪いことしちゃったな。」 「……………」 「それに、煌太のこと、全然分かってないんだ。 …さっきの話、聞いてたよ。 でも、てるおじさんは意味が分からなかった。 …まーくんは凄いね。おじさんが分からなかったことを分かってるみたいなんだ。」 「…!はいっ!まーくんはすごいです!」 「アハハ!そっか。煌太はまーくんが大好きなんだね。」 「はいっ!」 「…おじさん、煌太がこんなに笑ってるところも、シャキシャキしゃべるところも、あんなに泣いちゃうところも、全然見たことなかったよ。 …こんな子だったんだって、ビックリした。 でもそれが分かって嬉しかった。」 「……………」 「…亜以子ちゃん。」 「は、はいっ!」 「君にも謝りたい。すまなかった。 …煌太を…宜しくお願いします。」 「はい…ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!」
/312ページ

最初のコメントを投稿しよう!