亜以子vs煌太

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そんな大人のやり取りが分かるはずもない煌太が、再度泣き出した亜以子を見て顔が歪む。 「…ふぇ…亜以ちゃ?どしたの? ありがとうって泣くの?どっか痛いの?」 「ハハッ!…煌太。」 「なぁに?まーくん。」 「うちに帰ろうな。また、亜以子と俺と三人で暮らしていいよって、おじさんが許してくれたんだ。」 「…え……ほんとー?」 「ああ。」 「……うえぇぇええええん!」 「あーあー。結局泣くんだな。」 亜以子と二人、抱き締めあって泣き出した。 喜びに満たされた涙は、俺と亜以子を癒した。 「…てるおじさん…ごめんなさい… 僕…亜以ちゃのところがいいの…」 「ああ。分かってる。」 「ごめんなさい…」 「謝らないでいい。煌太の気持ちが一番だから。」 「…てるおじさん、好き。」 「っっっっっ!」 …あ、射ぬかれた。 今、絶対キュンってなったぞ。こいつ。 破壊力あるんだよな。煌太の「好き」は。 お互い仕事があるため、就業後に再度会う約束をし、煌太を連れて彼は出ていった。 …だよな。脱走犯だからな。 「すごいドラマを見た感じだった。」 「なんだそれ。」 「お前、我が子ながらいい男になったと思った。」 「仕事に戻れよ親父。」 ブツブツ言いながら、親父も社長室へ戻っていった。 そして亜以子と二人きりになった。
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