2044人が本棚に入れています
本棚に追加
そこは、堂本亜以子の席。
その姿は見えない。
少しずつ近づけば、小さな独り言も聞こえてくる。
ゴンッ!
『私だって忙がしいんだから…グスッ』
ゴンッ!
『ありがとうって言ってほしいだけだもん』
ゴンッ!
『…部長、サボりすぎだしっ…グスッ』
ゴゴンッ!
『部長、ハゲ』
どうやら部長と何かあったらしい。
デスクの下で、デスクの壁を拳で殴っていた。
ただ、こういうネガティブ堂本を見るとは思わず。
そして、文句がやはり21歳らしく可愛いもので。
『ブハッ!』
思わず吹き出した。
一頻り笑ったあと、俺を蒼白な顔で見上げて固まる堂本に気づく。
『俺、忘れ物を取りに来ただけ。みんなも一時戻らないから、続けていいぞ。』
それだけ言って会議に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!