俺vs隣

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「おはようございます。沖田課長。」 「おはようございます。」 「ああ、おはよう。」 …俺、今なら誰にだって優しくなれる気がする。 自分の歩いてきたところに花を撒き散らせている気分だ。 長かった一日の翌日、俺は高揚した気分で出社した。 まだ興奮がおさまらない。 幸せで仕方ない。 そんな状況でオフィスに入る。 「……………」 「…課長?おはようございます。どうかされました?」 「……おはよう。いや、別に。」 「そうですか?」 …忘れてたっ! 昨日付けで移動になったんだ! いつものデスクにいるはずの堂本亜以子がいないことに、ここで気づいた俺はアホかもしれない。 一気に気分が急降下した。 だが、そういうときに空気を読んでくれるのが堂本亜以子だ。 「課長、おはようございます。」 「堂本。おはよう。どうした?」 「こちらの企画書類を持ってきてしまって。お返し致します。」 「ああ、ありがとう。人事部はどうだ?」 「どうだと言われても…皆さんのことはまだ分からないですし、仕事も全く覚えていないので。」 「大変だ。どうだ?戻ってこないか?」 「…そう言われましても会社の決定ですし、こちらのお仕事は皆さんお暇そうでしたし。」 「……………」 あ、オフィス内の空気が固まった。 チラリと堂本亜以子を見るが、俺の視線に気づいたら可愛く微笑み返しただけ。 悪びれた様子はない。 …こりゃ、ポジティブに捉えた結果だろうな。 「堂本。ちょっといいか。」 「?…はい。」 彼女を連れてオフィスを出た。
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