第二部:秋冬の定まり。 歩みは変わらず・・・4

1/39
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ

第二部:秋冬の定まり。 歩みは変わらず・・・4

       1 11月も下旬に入ろうか、と云う頃のある日。 食堂で昼を過ごす木葉刑事の元に。 「木葉どの、隣席、宜しいかえ?」 入れ替わりの激しい一角を避けて来た鴫鑑識員が、木葉刑事の元へ来た。 「どうぞ」 答えた木葉刑事は、タブレット端末機を駆り出して何かを見ている。 彼の隣席に座る鴫鑑識員は、髪を服から出していて。 庁内では珍しく女性らしさが溢れている。 そのしなやかな身体に立派な胸、黒く艶やかな髪は男性を惹き付ける。 だが、納豆を啜る木葉刑事は、立てかけたタブレット端末機より遠矢の起訴が決定するニュースを見ていた。 その内容を鴫鑑識員もチラと見て。 「やはり、気に掛かりますかな。 遠矢の事…」 味噌汁で口を空けた木葉刑事は、 「まぁ、ね。 親しい人も関わったし」 「それは、古川と云う刑事どのの・・」 「はい。 午後、娘さんの通う学園に行こうかと」 「木葉どのが・・かえ?」 「古川さんの娘さんだけじゃなく、他にも迷惑を掛けた遠矢ッスからね。 早く安心させてやりたいんで…」 「ま、慈悲深きこと…」 処が、此処で木葉刑事が突然に、だ。 「あの、話が変わりますけど、鴫さん」 いきなり、ちょっと深刻そうな物言いに変わった木葉刑事に、焼き魚定食のお新香を食べる鴫鑑識員は、驚くと共に顔を横にして。 「な・なにご・と?」 なかなか真剣な表情の木葉刑事で在り、ちょっとドキドキし始める鴫鑑識員だ。 その木葉刑事は、 「実は・・」 「ほむ・・」 「もうそろそろ、里谷さんの誕生日らしいンですがね」 「ん?」 目を点にしそうな程に気持ちが固まった鴫鑑識員。 自分か、彼の話では無い。 食べる事に戻る鴫鑑識員。 (不覚、引き込まれてしもうたわ) ドキドキを沈ませ様と思うままに。 「何か、個人的に木葉どのが贈ろうと?」 と、話を繋げば。 顔を前に戻す木葉刑事は。 「いや、班でお金を出し合って買う事にしたんですがね」 「ふむ」 「相手が、あの里谷さんなんで。 自分は、‘メリケンサック’が似合うと意見を出したんですが。 何故か、却下されましてね。 里谷さんですから、合法的なものだと、‘木刀’か、‘メリケンサック’が妥当と思ったんですよ」 如何にも、当たり前の雰囲気で話す木葉刑事。 然し、最初の‘メリケンサック’辺りから、食する事を止めた鴫鑑識員が、驚く顔で木葉刑事を見た。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!