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第二部:秋冬の定まり。 歩みは変わらず・・・5
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真江崎なる女性の身元を調べる捜査が本格的に始まった。 松本弁護士がどう動くかより、彼女の本性を探る方が先決と伊集院署長が叱咤した。
一課の刑事は、各自所轄の刑事達と組んで銀行から郵便局まで、過去の事件を洗う。
一方、自由となった木葉刑事は、小田部刑事と河田刑事を伴って、あの絵のことを調べて回る。 画商や画廊のオーナーや芸術家まで回った。
処が、不思議なことがその次の日の夕方に起こる。
小石川警察署に、歩き回った木葉刑事達が戻って来た。
河田刑事は、木葉刑事へ。
「ですが、木葉さんは凄いですよ。 良く、あの名前に辿り着いた」
小田部刑事も、疲れた顔を手で撫でながら。
「全くですよ。 あの質問は、私にはもう・・謎ですらある。 いや、いやいや、貴方に言われる噂が、違う意味で本当と解りました」
三人は、忙しなく報告を受ける木田一課長と伊集院署長の前に立った。
「木葉、戻りました」
木田一課長は、やって来る様子からまた新たな情報を得たと察して。
「木葉、お前の左右に居るベテラン刑事の顔色を窺うに、また新しい情報を得たようだな」
この誘い水に、河田刑事が興奮を抑えられずに。
「一課長、確認はまだですが、あの絵の作者が解りそうです。 明日、確認に福島は郡山へ行かせて下さい」
説明が抜けた報告に、小田部刑事が話を繋ぐ。
「一課長。 あの絵の作者を探して居ましたら、木葉刑事がこう尋ねました」
“この作風で、過去に賞を取った人物は知りませんか? その後に埋もれた画家など、何でもいいんですが…”
「と・・。 すると、或る画家が証言をしました。 福島県の郡山出身だった画家に、あの絵と同じ作風の人物が居たと」
話を聞いた木田一課長は、木葉刑事を見返し。
「お前、またやってくれたな。 よし、確認に明日は福島県へ行け。 その画家の名前は、割れたのか?」
「はい」
木田一課長が言ったことを、実感として伊集院署長は覚える。
(木葉刑事・・か。 噂の様な不正をしていて、この捜査は有り得ない。 彼の特殊性か…)
こんな風に次々と捜査が進むのは、伊集院署長も不思議な感覚に至る。 順調な捜査は幾らでも経験が有るのだが、この不思議な感覚はない。
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