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処が、他の刑事は面倒くさそうな顔色で、考えすぎと言いたげだ。
尚形係長など、馬鹿馬鹿しいと席を立つ。
それでも、篠田班長は木葉刑事のこの考えすぎの勘が、これまでも良く当たる為に。
「一課長、木葉の憶測もまんざら心配し過ぎとは言えません。 宜しければ、注意を促す電話でも入れましょうか」
と。
木田一課長は、事に因れば松本弁護士にも任意の、事情聴取をする必要が出て来ると思い。
「そうだな、そうするか」
たが、それでは殺人は防げない。 木葉刑事は、大きく一手を詰めるべく。
「一課長、自分に行かせて貰えませんか。 身の危険の話が出れば、松本弁護士も態度を変えて何か話すかもしれません」
時計を見る木田一課長。
「今からって、明日の福島行きは大丈夫か?」
「一課長。 絵の作者については、取った賞も、名前も、出身も聞けましたので。 明日は、小田部さんや河田さんが行けば、それで確実に判ると思います。 それより、不安の芽だけは潰させて下さい」
「ふむ・・」
考える木田一課長に、木葉刑事は場違いなまでに真剣な態度で迫ると。
「あの重たい昔の軍剣とやらで、大の男を貫通するまで貫く力強さは、普通の男性でも難しい。 然も、監察医からの報告では、一撃で臓器を狙い済ました形跡があり。 その後に剣を動かして、内臓損傷も狙った節が有ると言ってました。 有賀の存在が浮き出した今、少し臆病でも、心配し過ぎでもいいと思います」
‘有賀’、この警察内でも最大の汚点となる人物の名前には、木田一課長も不安感を覚え。
「・・そうだな。 有賀の存在が無関係となるまでは、心配はしても然るべきだ。 よし、木葉、行け」
木葉刑事にGoサインを出した木田一課長に、篠田班長も続き。
「里谷、悪いが木葉と行ってくれ。 弁護士事務所が何処に在るか解る誰かが一緒なら、要件も早く終わるだろう」
警察車両の鍵を持ったままの里谷刑事だから、どうせならばそれが良いと。
「明日は非番ですから、構いません」
サッサと動く木葉刑事の後を、里谷刑事も続く。
さて、残る刑事達は、各々に木葉刑事の変人ぶりを噂する。
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