第二部:秋冬の定まり。 歩みは変わらず・・・5

6/37
前へ
/37ページ
次へ
それから、30分ほど経った頃か。 帰宅時の混雑する道路事情で、木葉刑事と里谷刑事がジリジリしながらも松本弁護士の間近へ迫る頃。 小石川警察署に、警視庁で活動する八橋刑事から電話が入る。 ‐ もしもし、八橋です。 一課長は、居られますか。 ‐ 「八橋か、どうした?」 ‐ はい。 実は、窃盗犯の水野の証言の裏を確認していますが。 水野が仲間と思われる中島と接触した日の映像も、別れた後から帰宅までの足取りもほぼ掴めました。 ‐ 「そうか、それで?」 ‐ はい。 水野の証言は、ほぼ間違い無いですね。 問題は、今回の事件が発覚した日の夜、中島が大田区のアパートより電車の中央線で西に向かっていることです。 ‐ 「西・・三鷹や八王子か?」 ‐ それが、主要な駅に在る映像データには、中島の降りた様子が在りません。 多摩方面や高尾山などの情報は、明日に回そうかと…。 ‐ この情報に木田一課長は違和感を覚え。 「八橋、水野の知り合いの中島と云う人物は、登山や散策が趣味のか?」 ‐ いえ、パチンコを軸にしたギャンブルと、酒の他にこれと言って。 ‐ 「そんな人物が、夜に多摩方面へ出かける方が変だろう。 窃盗犯なら、犯罪をする為に出かけると見るのが妥当ではないのか?」 ‐ 然し、一課長。 多摩方面で起こった窃盗や空き巣などの事件に、中島の生活は符号しませんよ。 中島の物色は、主に昼間に行われ。 それは、世田谷や白金、他は相模原市などの…。 ‐ 八橋刑事の話を聞く木田一課長は、木葉刑事の不安がまた胸中に甦る。 (おい、まさか中島が木葉の云う通りに始末されていたならば、その日は事件発覚の夜か? こ、これは…) ゾクゾクする不安感が、木田一課長の思考を行動にさせる。 「八橋」 ‐ はい ‐ 「木葉が、中島は口封じに殺害されていると推測した」 ‐ あっ! 中島が逃げるなら、なにも都内の山中なんて選ばないかも知れない。 中島は出身が関西で、実家は農家ですから。 手伝いに戻ればいいだけですが、実家に連絡は全くないとか。 呼び出された、そう過程するならば、夜に電車で行くのも有り得ますよっ。 木葉さん、流石だ! ‐
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加