空っぽの宝石箱

【１】

「今度の全校討論で…あの、怒らないでね？カウンセリングルーム登校を認めるか否か。言い出したのは会長の小沼君なんだけど…」
小沼、小沼、こぬま？悪いけど顔も何も思い出せないわ。
「別に怒ってない。もともとカウンセリングルーム登校は賛否両論だし」
「私なりに止めたんだけど、小沼君は…」

イヤフォンを耳に突っ込み一時停止から再生に切り替えてボリュームを２つ上げた。
すたすたと凛を置いて速足で家を目指す。
考え事したいときはデカい音で聴くロックに限る。
多分後ろで凛は何か言ってるだろうから振り向かずに右手を上げ振っておいた。