ワン・ストーリー

2/15
前へ
/15ページ
次へ
 しっぽをふりふり、僕はいつものお散歩コースを行く事にした。  僕の苦手な大型犬のいる家の前を通って、電柱におしっこしたり、道端の草を噛んでみたりしながら、近くの公園に行ってみた。  爽ちゃん達と散歩に来た時にはいつも、人がいっぱいいて、一緒に大きな犬や小さな犬も来ていたんだけど、今日は人が少なくて、犬は一匹もいなかった。  うーん、つまらないなぁ。  公園を見渡しても、面白そうな事はない。いつもは、ここでUターンして家に帰るんだけど、僕は物足りなかった。  もっと、遠くに行ってみようと思ったんだ。  公園を出て、適当に右や左に曲がってみる。ここから先は、僕にとって未知の世界だ。  白い壁のマンションがいっぱい並んでいる。  いつまでも白い壁が続くから、僕はその先に何があるのか知りたくなった。マンションを十何個かまで数えた所で、白い壁が消えた。  そこで、僕は目をぱちくりさせる。  いきなり、緑の風景が広がったからだ。青々とした田んぼがいくつもあるし、何だか空気もおいしい気がする。  僕は嬉しくなって、アスファルトを走り出した。少し行くと、川があって、その横に広場みたいな場所がある。  僕はその広場に入ってみた。そこで、思いっきり走り回る。  走って、跳ねて、深呼吸。草の匂いと水の匂いが混ざっていて、何だかすっきりした気分だ。  ふわぁあと大きな欠伸を一つ。お昼寝をするのにも、気持ちいい場所だな、と思ったのは覚えている。そう思って、いつの間にか僕は、草原で眠っていた…。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加