第一話「ここから」

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まだ、ねむい。眩しい。瞼の裏が赤い。 目を閉じていても太陽の光が目に強く刺さっている。 でも、体に合わせて包み込んで揺れるゆりかごのような最愛のベッドからは離れられない。 - --- ---- 最近の仕事はPC作業が多く、目を閉じなくても充血して赤いというのに。 …決して視界自体が赤いからとかそのあたりな重大なことではないけれど。 今年の春からとはいえ、毎日毎日、働き詰め。 学生の頃がほんとによかったなと感じる。 分からないことを聞いて、説明をしっかり理解し、少し提出物が悪くても怒られない。 今や全てが逆。わからないとこを聞ける空気じゃなく、聞けたとしても軽く説明され、少しでも間違えれば怒られる始末だ。"社会"という場所は、その場に出ただけで、"学校"という場所から180°変わる。あまつさえ、こんな自由な夢の中でも"自分達"の事を考えさせ、プライベートの時間さえも蝕んでいく。 本当に恐ろしい。ずっとこんな生活がこの先も続くのかと考えると、さらに恐ろしくなる。 ---- --- - しかし、こんなつらい夢でも、もう起きなくては。卒業してから一人暮らしを始め、もう半年が経つ。自分一人で起きるのも慣れてきた。都市部の陸橋のせいで日陰のワンルームという場所が最初はいやだったが、ようやく愛着が湧いてきたところだ。 朝は方角的に、陽が当たらないはず… 「…………うち(自宅)は、陽が当たらない…」 急いで目をパチッとあけた。目の当たりにしたのは夢か現実か分からず、驚愕というより、混乱した。
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