渡せなかったプレゼント

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渡せなかったプレゼント

父への誕生日プレゼントは、結局、腕時計にした。 長年愛用していたものが最近壊れ、修理するには隣町の時計屋まで持って行かなければならないらしい。 古いものだし、新しく買い換えることも視野に入れて考えていると言っていた。 だから、僕は腕時計を買った。 何ヶ月もお小遣いを貯めてもデパートのショーケースに並んでいる高価なものにはとても手が届かなくて、隅っこの棚に詰めて置かれているセール品の中から一番父に似合いそうなものを選んだ。 もしかしたらそれは、大人からしたら安物のおもちゃみたいなものだったのかもしれない。 でも11歳の僕にとっては、人生で一番大きな買い物だった。 レジでお金を払う時には、妙に緊張して手が震えた。 しかしラッピングしてもらった品物を受け取った時には、そのドキドキはワクワクへと変わっていた。 これを見たら、お父さんはどんな顔をするだろう。 喜んでくれるだろうか。 気に入ってくれるだろうか。 そんなことを想像しながら、僕はそのプレゼントを大切に抱えながら、浮き足立って帰路を急いだ。
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