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この大きな会社がそんなことで騒然となるわけないだろうが。
「せいぜいこのフロアでしょ。
まったく、礼ちゃんはオーバーなんだからー」
と言うと、
「それくらいの珍事ってことよ」
と言ってくる。
瞳のくるっとした可愛い友人の顔を見つめ、ちょっと相談してみたくはあるが、でも、こいつ、口が軽いからなーと思っていた。
「……なにもなかったよ」
「なにっ、その間!」
「っていうか、たぶん、課長の中ではなかったことになってるし」
雅喜は、酒の席で無礼な口を聞いていたことついては言及してきたが、あのキスに関しては、一切触れてこなかった。
覚えているのかいないのか知らないが、彼の中でなかったことになっているのは確かなようだ。
「心の問題じゃなくて、実際なにがあったか訊きたいのーっ」
いや、あんた暇だな、と思いながら、礼子に腕をつかまれていた。
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