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「ああ、今日は旦那はん呼んでくらはるやろか」
「逢状はどれくらい来てるんやろか…」
ここは島原でも人気の置屋『茜屋』
今年の秋はじめじめとした長雨が続いており、島原に足を運ぶ旦那衆もいつもの年に比べて極端に少ない。
「せやねぇ…うちかてこぉんな雨の降る中、揚屋まで行くのはめんどくさいわぁ」
ケタケタ笑いながら、天神の『花珠』が、寝そべったまま足でずるずる煙草盆を引き寄せながら呟いた。
花珠は煙管に煙草を詰めて火種を点すと、うつぶせになって、紅色の口許から
ふわぁ
と煙をくゆらせる。
だらしなくはだけた胸元からは雪の様に白い乳房がこぼれ出してみえる。
「いややわぁ。あんなだらしない格好…うちらまでだらしなく思われたらかなんなぁ…。」
他の遊女らは打掛の袂で口許を覆い、ひそひそと柳眉をひそませながら呟いている。
花珠は気だるげに彼女たちにむかって、
ふーっ
と煙草の煙を吹きかけると、
「堪忍ぇ~。」
と、ケタケタ笑いながら二階にある遊女たちのたまり場…化粧などを施す部屋から、打掛をずるずる引きずりながら出ていった。
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