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花珠は、廊下を打掛の裾をずるずる引きずりながら 気だるげに歩いていく。 化粧を施していないのに白粉を塗ったように真珠の様に白く肌目細やかでふわふわした餅肌の上に、大きくもなく細くもない目は黒目がくっきりとしている。 鼻筋はすぅッと伸びており、小鼻は小さく、少しだけポッテリとしたくちびるは紅を指していないのにもかかわらず、はんなりと茜色に染まっている。 眉は、すぅ と墨で掃いたようである。 島原でも上等な遊女の置屋『茜屋』の中で、ずるずると美しい打掛を引きずり、気だるげに足を運ぶこの女…花珠は別嬪も別嬪。 たいそう美しい容姿を持っていた。
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