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「…ちりちりちん」
「…ちりちりちん」
女はか細い声で歌いながら、廊下を舞いながら歩いて行く。
ずるずるひきづっていた打掛は、まるで蝶の羽根の様に、ふわり ふわりとはためく
二階へ通じる階段から、楼主の女将が
溜め息をつく。
「かつて『茜屋に更級太夫あり』と言われておったのになぁ」
「なぁにがあん妓(こ)ぉを、あんなんに変えてしもうたんやろなぁ。」
ふふふ
「ちりちりちん…」
「ちりちりちん…」
ゆっくりゆっくり、かつて『更級太夫だった』遊女が舞いながら部屋に消えていった。
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