SCHEME 2 第6章

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「当たり前すぎたんだ。その憧れに似た気持ちが。だけど、蓮さんに俺の中の生々しい感情を引きずり出されてしまって。それだけでも混乱していたのに、本物が現れたからもっと(まと)まらない気持ちになってしまったのだと思う」  そこまで語り尽くすと、黙って耳を傾けてくれていた勇司がゆっくりと口を開いた。 「前から思っていたけど。儀暁君は本当は育ちが良くて、頭も良いんだな。初めてオレが声をかけた時、だらっとしてたけど」 「実家が空手道場で、父が師範(しはん)なんだ。父は、厳しい人だった。母は、……本当に大事に育ててくれた。でも、……東京出てきて、(だま)されて、借金作って、……そして、拉致(らち)されて、監禁(かんきん)されて、ちょっと色々ありすぎた」  短い期間に怒涛(どとう)のように押し寄せた衝撃に翻弄(ほんろう)されて、まだ消化しきれていないのかもしれないと、儀暁は考え込んだ。 「蓮との間にあったことは思い出したの?ショックで忘れていただろ?」 「そっちはきっかけがあると少しずつ記憶が戻ってくる」 「それは思い出したくないこと?だよな?」  尋ねにくそうに聞いてくる男へ、「けど、思い出した方がいいような気がする」と返答した。 「……実は、今日、儀暁君と話したかったのは蓮のことなんだ」  やはり勇司は自分に何か用があったのだと、今度は勇司の話に耳を傾けた。 「ヤツが儀暁君にあの時計を(たく)したのは、蓮の中に特別な理由があったんだと思う。ヤツの狙いが何なのか分かれば、メモリーカードのパスワードの問題も解決するんじゃないかと」  でも、と勇司は冷めてしまった紅茶のカップをもう一度手に取り、その(しら)んだ湖面に目を落とした。 「儀暁君の話を聞いたら、それを思い出そうと努力することが、君にとっていいことなのかどうか……。諒に、ムリさせるなって言われてたのにな、オレ」
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