【私とは正反対の彼】

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奈々子の言葉に同意し、飲んでいた紙コップを捨てる。基本的にここの社員は一階にある食堂でお昼を済ます。たまに弁当を持ってきたりもするが私たちも例に漏れず、大抵は食堂を使用している。 五、六年前に元々あった社員食堂を改装したらしく、オシャレで安いと評判の良い所だ。 『あっ、やば。デスクに財布置いてきちゃった。取ってくるからちょっと待ってて!』 「はいはい、OK。」 鞄の中に置き忘れてしまった財布を取りに駆け足で戻る。部屋の一角では菱田くんはまだ囲まれていた。 (うわー......松原くん、怒ってるよー。女の子たち凄いなぁ。) 横を見ると菱田くんの同僚である松原くんが腕を組み、仁王立ちしていた。顔には出していないが「早くしろよ」オーラが凄いでている。 松原くんもモテる方だが、菱田くんとは違い、自分目当ての女の子を「邪魔、どっかいけ」と追い払ってしまう。だから、みんな面だって近づこうとはしない。 “対応の悪いイケメン”より“対応の良いイケメン”では、後者を選ぶだろう。 (これが乙ゲーだったら松原くんが“クール系王子”で菱田くんは“爽やか系王子”かな。) そんなことを思いながら奈々子の方へ歩いていると、菱田くんがいきなりこっちを見た。しかも、女子たちの間を掻き分けて近づいてくる。 (え、え、何!?)     
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