Realize

【私とは正反対の彼】

一緒にいることに耐えられなくなり、返事は聞かず一目散に逃げた。菱田くんが何か言ったような気がしたが、勘違いだと思うことにする。

「あっ、おそーい!!財布取るだけで時間どんだけかかってんの？日替わりランチなくなったらどうしてくれるわけ？」

『......ご、ごめん....!』

逃げた先はエレベーターの前で待つ奈々子のところ。けっこう時間がたっていたらしく、かなりご立腹の様子だ。まだドキドキしている胸を押さえ、小さな声で謝った。

「ん？どした？顔、青いけど？」

『ううん.....なんでもないから。さっ、行こ、行こ!!』

「えぇー......ちょ、押さないでよ～。」

タイミング良く来ていたエレベーターに奈々子を押し込み、階数ボタンを押す。

菱田くんが一体どういうつもりで誘ってきたのかは分からない。でも、これ以上関われば要らない反感を買うのは明白だ。私はこのことを奈々子に話さず、深く考えないことに決めた。