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「だからさぁ、先生は此処から出られないの」
「ぅあっ……」
リードを引っ張られ、息ができない為、首を掻きむしる。
そんな俺の行為を見て、柊木は嬉しそうに微笑んでいた。
狂ってる…
今の柊木を見ていると、誰もがそう思うだろう。
「こら、自分で自分を傷つけちゃ、駄目デショ? 先生を傷つけていいのは、僕だけなんだから」
「っ……! ゃめ……、ひ、らぎ……!」
つぅ、と俺の鎖骨をなぞる柊木は、怖いほど笑顔だった。
「柊木じゃ、ないデショ? ほら、僕は飼い主なんだから。
御主人様、は?」
「やっ!……ぁっ…」
「……先生……、躾が必要みたいだね……」
首輪を掴まれ、怖くて、反射的に柊木の頬を引っ掻いてしまった。
それが気に触れたのか、顔を近づけ、また怖い笑みで俺をじっと見つめた。
「ペットの躾は飼い主がしっかりやらないと、ね……」
「やめ、ろ……っ、柊木……!」
「先生は悪い子だなぁ、飼い主の言うことが聞けないなんて」
「ひっ……!」
「どう? 冷たくて気持ちいいデショ?」
何故かベッドへ押さえつけられ、お腹にローションをかけられる。
冷たくて、気持ちが悪くて、怖くて、必死になって逃げようとする。
そんな俺を柊木は観察するかの様に、じっと見つめるのだった。
逃げなくちゃ…
本能で、そう思った。
ベッドから抜け出て、部屋の扉まで急いで歩く。
柊木は俺を止めようとはせず、只々見つめているようだった。
寝室から出た俺は、玄関へ行こうと必死に歩を進める。
痛む体を無視して、なんとかこの地獄から抜け出そうと、必死に。
寝室から出ると、其処にはリビングがあり、その扉の奥を行くと、玄関があった。
「やっと、出られる……」
そう思った。
だが―――、
「残念だったね、先生。 その鎖、結構長いんだけど、玄関の手前で長さに限界が来ちゃうんだ」
「そ、んな……!」
さっきまで、大人しく俺のことを見ていただけの柊木が、俺の後ろに立っていた。
鎖がジャラッと音を立て、諦めろと嘲笑っているように思えた。
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