Citrus age  一ノ瀬夏哉目線③

8/35

34人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
俺は知ってる中で一番いい店に菜々子さんを連れてった。 ちゃんと白い石で門構えを作ってる一軒屋レストラン。 昼だけど前菜からデザートまでのフルコース。 俺の飲み代三回分。三回飲み会我慢。 菜々子さんはパスタをメインにしたけど俺は肉にした。 こういう店って女は好きだよな。 だけど、菜々子さんは笑いながらもたまに物憂げな表情を見せる。 絶品料理を前に俺に気づかれないようにため息をついている。 俺の胸の内側で得体の知れない黒雲が湧き上がるような気がした。 『饒舌で明るいナツが好き』そう言った彼女だけを思い浮かべ、俺は饒舌で明るい男でいた。 
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加