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Citrus age 一ノ瀬夏哉目線③ #2
そこで俺は顔をあげて、菜々子さんの目をまっすぐとらえた。
「勝手かもしんないけど。勝手だってわかってるけど、菜々子さんが昨日のこと、一から十まで全部なかったことにしようとしてるみたいで、すげえ嫌だった」
キスしたんだよ。
恋人同士の当然の行為をしたんだよ。
なかったことにすんなよ。
「乱暴なことしてごめん」
「うん…」
「やり直して」
「え?」
「昨日のこと、なかったことにすんのはやだけど塗り替えたい。あなたの記憶から。あなたが泣くのは嫌だ」
「……な、泣いてないよ」
「嘘だ」
俺はゆっくり菜々子さんの後頭部に手を伸ばし自分のほうにひきよせる。
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