Citrus age  一ノ瀬夏哉目線③ #2

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手が震える。逃げだす時間を与えるように慎重に丁寧に、引き寄せる。 菜々子さんは身じろぎもしないで俺を凝視してる。 「そんなに見るなよ。目ぇ閉じろってば」 俺はもう片方の手で彼女の頬をつつむ。 彼女はゆっくり目を閉じた。 怖がらせないキス。 優しいキス。 ……拒否されないキス。 俺は触れるだけのキスをした。 胸の湿度に涙が出そうだった。 なんでだろう。 嫌じゃなかったかな。 俺を怒らせないために我慢したんじゃないのかな。 やっぱりキスなんてするんじゃなかった。 また彼女が泣いたらどうしよう。 俺はうつむいて強く唇を噛んだ。
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