第7話 正月

9/22
前へ
/340ページ
次へ
 ピピピ…と、電子音が終わりを告げる。 「何度だった?」  知己はシャワーを済ませ、浴室から出てくると将之に聞いた。 「36度6分。平熱まで、落ちてます」 「そうか、良かったな」 「先輩に会えなかった為に出た知恵熱でしょうか」 「そんなんで、熱、出ねーよ」  将之の特徴ある口調にも随分と慣れて、知己は頭を拭きながら返事をする。 「なんだよ、コレ。こんな着替えしかないの?」  そして、用意された着替えに文句を言った。 「文句があるなら、裸で寝てくれても構いませんが?」  知己のトゲのある言い方に、将之もさすがに言い返す。 「……ちっ」  渋々、将之が用意したパジャマに袖を通してみたが 「あー……、やっぱり、だぼだぼだ……」  ストライプ柄の大きめシャツのパジャマ。  将之でさえ、ゆとりある作りの大きめのそれは、将之より身長が10㎝ほど低い知己には大き過ぎた。 「……」  凝視する将之に 「なんだよ」  と、不機嫌に知己が問う。 「いえ、少し『萌え袖』というのが分かりました」 「はあ?」 「いわゆる『だぼシャツ、萌え』という属性でしょうか?」 「俺に聞くな」 (また、妙な本で知識を付けやがったな……)     
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1306人が本棚に入れています
本棚に追加