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知己は呆れつつも、ベッドの将之の横の空いているスペースに身を潜り込ませた。
「あったかい……」
先客の居たほかほかとした布団の温かさにほっとし、小さく漏らす。
「温めておきました」
「豊臣秀吉か?」
正面のTV画面は、知己の約束通り「がきつか」の映像が流れていた。
それに満足した知己は、今日の寝床が決まって安心したようそこにたたずんだ。
(よく考えたら、なんでこいつと二人、ベッドでテレビ見ながら年越しやってんだ? 俺……)
数ヶ月前には考えられかった事態である。
「なんだか嬉しいな。先輩が僕の隣に居るなんて」
知己を横目で見やりつつ、将之が笑って呟く。
「言っておくけど、変な事したら帰るからな」
「……そういう言い方も、先輩の嫌いな脅しの一環だと思いますけど」
「お前に言われたくない」
憮然と言い返す。
「大丈夫です。今日は、もうしませんから」
「そうか」
(よっぽど一人の年越しが嫌なんだろうな)
と、知己は思った。
実際は、一人で過ごすのが嫌という訳ではなく、知己と過ごす年越しが嬉しくしょうがないようだ。
多少、知己の考える意味合いとは違う。
やがて除夜の鐘がなり、迎える新年。
「あけましておめでとうございます、先輩」
「ああ、おめでとう」
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