1304人が本棚に入れています
本棚に追加
「……なっ? ぅぅっ……!」
後孔の圧迫感に唸る。
「隙がある先輩も悪いんです。だから先輩の言うことは聞けません。今日は、顔も見えずにいっぱい寂しい思いをして下さい」
「お前! ……ぁ……あっ!」
この体勢では抗えない。
知己の思いとは裏腹に、後孔は将之を迎え入れざるを得なかった。
「誰にも触らせないで下さい。僕だけに……」
「あ、ぅ……んっ!」
「自覚して下さい。誰にも隙を見せないで。僕だけにそんな顔を見せて」
なんだか、いよいよもって腹が立ってきた。
自分の気も知らないで。
自分の都合ばかりを押しつけてくるこの男に。
「お、俺だって、こんな事……お前以外……嫌だ……っ!」
腹立ち紛れに出た言葉は、知己も思いもよらない言葉だった。
将之の動きが一瞬止まる。
「……本当?」
将之にとっても思いがけない言葉だったようだ。
知己の真意を確認してしまう。
「……あ…、う……、うん」
思わず出た言葉に、将之に真偽を問われても、なんともはっきりと答えられないが
(多分)
そうなんだろう。
(こんな恥ずかしいこと……こいつだけで十分だ)
「そうですか…。」
背後にいる将之の表情は、知己からはよく見えない。
最初のコメントを投稿しよう!