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門脇が遊んでいた手錠を「没収」と取り上げたのだ。
それを阿波野は実習が終わり返しそびれたから……と、知己に預けたのだ。
知己にとっては災難以外のなにものでもない。
学年飛び越えて、生徒を呼び出すのは当該学年の先生に対し、失礼に当たるだろうと思い、担任兼1年理科担当教師の落合に
「これ、門脇の持ち物らしいです。実習生の阿波野君が没収したらしいのですが……落合先生から返してもらえませんか?」
と、頼んだ。
しかし、落合はひどく迷惑そうな顔をすると
「平野先生から返してください」
と言った。
今年、定年を迎える落合は、その力量を買われて門脇の担任になったのだが、彼の手にも余るのだろう。
門脇を指導し続けているがうまく行かない。
彼の口ぶりからは、その疲れを感じさせた。
故に知己も、落合に頼むのはやめて自分から返すことにした。
それでその日の放課後、理科室に門脇を呼び出した。
「2年の先生が、俺に何の用?」
軽いアルミのドアを乱暴に開けると、門脇がずかずかと入ってきた。
見た目はまだ16歳の少年だ。
身長は知己よりやや低い。
だが体は知己よりもがっしりとしていて、確かにケンカ慣れしているような凄みある雰囲気を持っていた。
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