第8話・余談

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 髪が赤茶色で精悍な男らしい顔つきで、東陽高校にはあまり居ないタイプの生徒だった。  少し殺伐としたイメージがあるのは、素行の噂の所為か。  正直、知己は (……怖ぇ……)  と思ったが、阿波野の置きみやげをこのままにするわけにもいかない。  仕方なく 「これを返すように頼まれた」  と、例の手錠を差し出した。 「……なんで先生が持ってんの?」  怪訝そうに門脇が尋ねた。 「阿波野先生に没収されただろう? 阿波野先生は実習が終了しちまったから、俺から返すように頼まれたんだ」 「阿波野……? ああ、あのマッチョな先生」  まあ、門脇からしてみれば、190㎝を軽く超える体育会系体質の阿波野は「マッチョ」と形容されるのも当然だろう。 「それ、いらなかったのに。だから、マッチョ先生に没収されてやったんだ」 (されてやった……って……)  上から目線発言に知己は驚いた。  腕力にかなりの自信があるんだろう。  170㎝に満たないこの少年は、あの大男・阿波野に勝てるつもりでいる。  放課後に他校との揉め事をやらかしている噂は本当のようだ。 「そう言わずに受け取れ。そして、二度と学校に持ってくるな」  ジャラリと音を立てて、手錠を門脇に差し出した。  門脇は面倒そうに、ため息を一つ吐くと 「それ、友達がくれたんだ」     
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