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「例えば、髪の色とか……。いかにも……な感じじゃないか。高校生らしい身なりをすれば、多少は因縁ふっかけられる事もなくなるんじゃないか?」
知己が思いつくままに言ってみた。
教師としての指導……というよりも自分の主観、もしくは人生の先輩としてのアドバイスに近い。
だがその時、門脇の眼光が更に鋭く光った気がした。
「……これ、地毛」
言葉少なく、知己に告げた。
そこには、明らかに知己の見た目重視の意見に批判の意が込められていた。
「あ、そうなのか。ごめん」
知己は反射的に謝っていた。
すると……これまた妙な現象が起こった。
氷のように冷たく批判と侮蔑に満ちた門脇の目が、大きく見開かれ、ぱちぱちと数回瞬きされたのだ。
言ってみれば、正に「目が点」状態になったようだった。
その素っ頓狂な表情は、16歳という門脇の年相応の表情にも見えた。
(あれ? こいつ、やっぱり高校生だ)
その変化に、いつも接している生徒らとなんら変わりない雰囲気を感じ取り、知己の気持ちは和んだ。
(問題行動多いって聞いてたけど……こいつ、ただの16歳の高校生なんだ)
さっきまでの警戒心はどこへやら。
急に門脇に親しみを覚え、
「なんか変な事を、また言ったか?」
さっきの表情の変わりよう思わず尋ねてしまった。
「……大人が謝るのを、初めて聞いた」
真顔で門脇が言った。
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