第8話・余談

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(門脇の嫌な言い方は偏見+頭の良さからくる嫌味だったんだな……)  と、知己はこの時思った。 「確か、先生の専門は理科だったよな」 「生物と化学を担当してるけど?」 「……くっっっっっっっっだらねえ!」  思いっきり間を取って言いはなった言葉は、教師に対しても教科に対しても非道く見下された言葉だった。 (ム)  いつもは将之に全否定かます知己だが、自分にされると腹が立つ。 「どこが下らねえんだよ」  怒気をあらわに言い返すが、門脇は気にもとめず 「だって、それが人生の何の役に立つわけ? 受験の為、進学の為にやっているに過ぎねえだろ?」  平然と言う。  まあ、確かに微分積分が人生で役に立つとは思えない。  とりあえず、「+-×÷」の四則計算さえ分かれば、日々の生活に困りはしないだろうけど……。 (でも、こいつの言い分は偏っている……!)  そう知己は思うのだ。  人生、それだけではない。  27歳の知己は、社会に出てもないくせに、したり顔で語るこの11歳年下の高校生に、このまま言い負かされるのを良しとしなかった。 「そんな事はない」  だが、元々そう饒舌ではない知己だ。  偏差値84の門脇の方が何倍も理論攻めでは上手を行く。言葉に詰まっていると、門脇は畳かける勢いで言った。     
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